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キャリアか健康か—男性更年期障害と向き合うための新しい働き方

otokono-kounenki

「仕事がすべて」—そう思って何十年も働いてきました。部下を育て、上司を支え、成果を出し続けてきました。しかし、ある日突然、朝がつらい。集中力が続かない。理由もなくイライラし、部下や家族に八つ当たりしてしまう。そして病院で言われたのは「男性更年期障害」でした。

「気の持ちようだろう?」と最初は思いましたが、体は正直です。以前のようにバリバリ働けない自分が情けなく、悔しい。でも、だからといって仕事を手放すなんて、考えたこともありませんでした——。

これは、男性更年期障害によってキャリアの向き合い方を変えた、知人の言葉です。

このように、男性更年期障害を迎えた中高年男性の多くが、キャリアと健康の狭間で揺れ動いています。しかし、これからの人生をより良く生きるためには、「働き方」そのものを見直す時期かもしれません。

男性更年期障害とキャリアの葛藤——なぜ仕事を手放せないのか?

男性更年期障害の症状には疲労感、集中力の低下、抑うつ感、イライラ、焦燥感などがあります。しかし、これらの症状に気づいても、すぐに仕事をセーブする決断ができる人は少ないのが現実です。それには理由があります。

  1. 会社人間としてのアイデンティティ これまで「仕事=自分の価値」だった人ほど、仕事をセーブすることに強い抵抗を感じます。「ポストを降りるなんて、負けたみたいだ」「キャリアダウンしたら、家族に申し訳ない」と考えてしまいがちです。自分のキャリアに誇りを持っている人ほど、この変化を受け入れるのが難しくなります。
  2. 周囲の目が気になる 日本の職場では「頑張ること」が美徳とされています。調子が悪くても「気合で乗り越えろ」「まだいけるだろう」と言われる環境も多いです。そのため、自分から「少し仕事を減らしたい」と言い出しにくいのが現状です。さらに、役職を手放すことで評価が下がることを恐れ、決断できないこともあります。
  3. 仕事を失うことへの不安 50代を迎えた人の多くが「今の仕事を辞めたら、もう次はないかもしれない」という危機感を抱いています。家のローン、子どもの教育費、老後資金……考えれば考えるほど、手を緩める選択が難しくなります。特に、年齢とともに転職が難しくなるという現実が、この不安をさらに大きくします。

キャリアダウンは逃げではない——柔軟な働き方のすすめ

しかし、健康を犠牲にしてまで現状維持をするのは、本当に正しい選択なのでしょうか? 男性更年期障害の症状が進行すると、仕事だけでなく家庭生活にも支障が出ることが多いです。パートナーとの関係悪化、子どもへの影響、最悪の場合うつ症状や退職に追い込まれるケースもあります。

そこで、 「ポストオフ」「キャリアダウン」「働き方の柔軟化」 という選択肢を前向きに考えてみることが大切です。今後の働き方をどうするかを見直すことは、人生全体をより良いものにするための重要なステップです。

▶ ポストオフ(役職を降りる)という選択

例えば、部長や課長というポジションを降りて、一社員として働く選択肢もあります。役職を手放すことで、責任の重圧から解放され、ワークライフバランスが改善します。「自分のペースで仕事を続けられる」ことは、男性更年期障害の改善にもつながります。また、管理職から現場に戻ることで、新たな視点を得ることもできます。

そろそろ会社から与えられた借り物のポストにしがみつくのはやめるべきです。

▶ キャリアダウンはネガティブなことではない

「キャリアダウン=人生の後退」と思われがちですが、実はそうではありません。 役職や年収よりも、自分の健康やライフスタイルを重視する生き方も、立派な選択肢です。たとえば、週3~4日の勤務にシフトする、リモートワークを増やすなどの工夫もできます。働き方を見直すことで、仕事の質が向上するケースも少なくありません。

そもそも、キャリアは何もアップだけではありませんからね。戦略的なキャリアダウン、パラレルキャリア、キャリアスライドなどなど。「キャリアの多様性」も現代の当たり前ですから。

▶ 「働き方の多様化」を活用する

現在、企業の多くが シニア社員の柔軟な働き方を受け入れつつあります。時短勤務、ジョブチェンジ、社内フリーランス制度など、選択肢は意外と多いです。会社の制度を活用し、無理のない働き方を模索するのも一つの方法です。さらに、フリーランスや副業といった新しい働き方に挑戦することも可能です。

人生100年時代、キャリアはもっと自由でいい

男性更年期障害は「働き方」を見直す大きなチャンスです。 これからの人生は、健康と両立できる働き方を選ぶことが重要になります。

  • 「頑張りすぎない」ことを許す
  • ポストオフ・キャリアダウンはネガティブではなく、未来へのステップ
  • 会社の制度を活用し、無理なく続ける道を探る
  • 新たな働き方に挑戦し、人生の選択肢を広げる

「まだまだ働かなきゃ」と焦る気持ちもわかります。しかし、これからの人生は、今までのように仕事一色でなくてもいいのです。 もっと自由に、自分らしく働く道を探してみましょうよ。 健康を守ることは、未来の自分への最大の投資なのですから。

あなたのキャリア、どう選びますか?「キャリアを維持すること」だけが正解ではありません。あなたにとって「ちょうどいい働き方」を見つけることが、男性更年期障害と向き合うカギになります。

ポストオフも、キャリアダウンも、働き方のシフトも、すべて「未来をよりよくするための選択肢」です。

いま、あなたにとって本当に大切なのは何か——
それを考える時間を、少しだけ取ってみてもいいかもしれませんね。

男性更年期障害の克服に必要なのは「ひとりじゃない」と思えること

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ABOUT ME
タツヤ
タツヤ
男性更年期障害予防改善アドバイザー
1971年生まれ。
2010年頃から動悸、めまい、発汗、倦怠感などの症状に悩まされる。
様々な病院で検査を受けるも原因が分からず『診断難民』状態に。
その間、体調は悪化するばかり。
2019年頃から体調不良(不定愁訴)が顕著に現れる。
2022年11月ホルモン検査の結果、男性更年期障害の診断を受ける。
以降、テストステロン補充療法を中心に治療を続け、合わせてテストステロンをアップさせるための生活習慣の改善に取り組み、2023年11月時点、テストステロン値も正常になり、男性更年期障害の症状は改善する。
現在は、自身の経験を活かし、SNS(X【旧Twitter】)やblog、同じ悩みを持つ方々によるコミュニティ、さらには各種メディア出演など通じて、男性更年期障害を中心としたメンズヘルスに関する情報を発信している。

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