男性更年期障害の診断基準が変わってたって知ってた? 2007年と2022年の診断基準を比較してみた件

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「あなたがこれまで知っていた男性更年期障害、すなわちLOH症候群の診断基準が大きく変わるかもしれません。2007年の基準では、遊離テストステロンを中心に設定されていましたが、2022年に公表された新しい「LOH症候群の心療の手引き」では、遊離テストステロンだけでなく総テストステロンや臨床症状の見方も根本的に見直されました。

この変更がなぜ必要だったのか、また、なぜ新しい基準が医療現場で広く採用されていないのか、多くの方が疑問に思っていることでしょう。

さらに、新しい基準を採用しない医師に対するペナルティがあるのかどうかも気になる点です。

これらの変更には、単に科学的な進歩だけでなく、現場の医師たちが直面している挑戦や困難が関わっています。

この記事を通じて、それらの変更点がどれほど重要で、あなたの健康管理にどのように役立つのかを明確に理解していただければと思います。

今回は、新しい診断基準について、専門的な知識もわかりやすく解説し、その背後にある科学と臨床現場の実情を深掘りします。

また、新しい診断基準がなぜ医療現場に浸透しづらいのか、基準に従わない医師にどのような影響があるのかについても触れています。

どうぞ最後までお付き合いくださいね。

2007年から2022年へのLOH症候群診断基準の進化

何はともあれ、まずは2007年から2022年へのLOH症候群診断基準の比較をして見てみましょう。

診断基準2007年版診断基準2022年版診断基準
総テストステロン(TT)定められていない250 ng/dL未満
遊離テストステロン(FT)8.5 pg/mL未満を低下値として設定(20歳代のmean-2SD)総テストステロン(TT)が250 ng/dL以上でも、遊離テストステロンが7.5 pg/mL未満の場合
基準値の根拠20歳代の平均値の70%以下もLOH症候群のボーダーライン症例として考慮される遊離テストステロン(TT)が7.5 pg/mL以上でも、臨床症状が現れている場合
測定方法測定方法に関する詳細な言及はなしRIAまたはELISA、CLIAによるTTおよびFTの測定を推奨

新基準の導入の背景には何があった?

前項でご覧いただいたように、かなり変わりましたよね。

パッと見ると、数値部分に目が行きそうですが、さらに重要なポイントで言うと、「測定値に関わらず臨床症状と併せて総合的に判断することが重要」となっていることです。

つまり、数値だけで判断するのではなく、実際に起きている様々な症状を見て判断するというものです。

LOH症候群の診断基準の大幅な改訂は、科学的研究および臨床データの進歩に基づいて行われました。

これまでの基準ではテストステロンの低下を主に加齢現象と見なしていましたが、新しい研究によりテストステロン低下が多様な生理的、心理的症状に直接関与していることが明らかになったため、これを単なる加齢現象と見なすことの限界が指摘されてきました。

そのため、より包括的な診断基準の必要性が高まり、以下の理由に基づいて改訂が行われたのです。

テストステロン値と臨床症状の関連の再評価

2007年の手引きでは、テストステロンの血中濃度(遊離テストステロン)だけが診断の主要指標とされていましたが、これが全ての患者における症状の強さや性質を正確に反映しているわけではないことが研究によって示されました。

特に、症状があるにもかかわらずテストステロン値が標準範囲内である「有症状正常テストステロン症」の患者が存在することが認識され、これに対応するためにも新しい基準が必要とされました。

アンドロゲン受容体の遺伝的多様性への対応

テストステロンの生物学的効果はアンドロゲン受容体(AR)を介して発揮されますが、個人によってARの遺伝子配列には多様性があり、同じ血中テストステロン濃度でも症状の重さが異なることがあります。

この遺伝的変異を考慮に入れることで、患者一人ひとりの症状に基づいたより精密な治療が可能となります。

非薬物治療の適用の拡大

2022年の手引きでは、テストステロン補充療法だけでなく、ライフスタイルの改善や運動療法などの非薬物治療の重要性が強調されています。

これは、薬に頼らない自然な治癒能力を最大限に活かすことで身体への負担を軽減させること、薬物依存を避けつつ患者のQOLを向上させることが大切であると考えられたからです。

テストステロン補充療法の適応拡大と個別化

テストステロン値が基準値以上であっても、症状に応じてテストステロン補充療法が有効である可能性がわかってきました。

これはアンドロゲン受容体の遺伝的な変異によって、標準的な治療プロトコールではカバーできない患者がいるためです。

これらの理由から、新しい診断基準はより包括的で、個々の患者の状態に応じたより適切な診断と治療が可能となるよう設計されました。

これにより、LOH症候群の管理がより効果的に、かつ安全に行えるようになることが期待されています。

新基準はなぜ医療現場で広がりにくいのか

2022年に新しいLOH症候群の診断基準が示されたのに、医療現場には広まっていない現実があります。

なぜなのでしょうか?

その背景には何があるのでしょうか?

ここでは、新しいLOH症候群の診断基準の導入がなかなか広まらない理由について探ってみましょう。

診断基準の変更に伴う混乱!?

最初に考えられるのは、診断基準自体の変更が医師や医療機関にとって大きな変更であるという点です。

2007年の基準から2022年の基準への移行は、単に数値の更新ではなく、診断のアプローチそのものを見直す必要があります。

従来の様に、血液検査をして「遊離テストステロンが8.5pg/mL未満なら注射をする」という、シンプルな判断だけではなくなります。

臨床症状を注意深く観察して、診断を下さなくてはならなくなります。

これには、新しい診断基準を学び、患者さん一人ひとりの症状に合わせて適用するための時間と労力が必要です。

特に、旧基準に慣れ親しんできた医師にとっては、新しい知識を取り入れることへの抵抗感があるかもしれません。

経済的・時間的な制約

新しい診断基準を実施するには、より詳細な検査が求められることが多く、これには追加のコストや時間を要することになります。

医療機関がこれらの資源を確保することは、特に地域によっては大きな負担となる可能性があります。

また、保険適用外の検査が増えることによる患者負担の増加も、新基準の普及を妨げる一因となっています。

患者とのコミュニケーションの障壁

新しい診断基準に基づいて治療を行う場合、患者さん自身にもその変更の意義や必要性を理解してもらう必要があります。

しかし、これまでの経験や認識と異なる情報を受け入れることは、一部の患者さんにとっては困難かもしれません。

医師が新基準の説明を適切に行う時間が不足していることも、その理解を妨げる要因となり得ます。

医療界の保守性

医療界には、新しい治療法や診断基準を採用するまでに時間がかかるという保守的な側面があります。新しい科学的証拠が示されたとしても、広範な臨床試験やガイドラインの更新を経て初めて一般に広まることが多いのです。

この遅れは、新しい基準が広く採用されるまでの時間をさらに長引かせる原因となっています。

これらの障壁を乗り越え、新しいLOH症候群の診断基準を普及させることは、多くの挑戦を伴いますが、それによって得られる利益—つまり、より多くの男性が適切な診断と治療を受けることができるようになる—は計り知れません。

あなた自身がこの情報を理解し、医師との対話に活用することが、変化を加速する一歩となるでしょう。

そもそも医師は新基準に従わなくてもいいの?

そもそもですが、医師は新基準に従わなくても問題ないのでしょうか?

結論からすると、必ずしも従う必要はありません。

2022年のLOH症候群診療の手引きに示された新基準に従うかどうかは、確かに各医師の判断に委ねられているのです。

これらの手引きはあくまで推奨事項であり、法的な強制力をもっているわけではありません。

従って、これに従わなかったからといって直接的なペナルティが科されるわけでもないのです。

ただし、手引きは最新の医学研究と専門家の合意に基づいて作られるため、診療の質を向上させ、患者に対して最適な治療を提供するためのものです。

医師が手引きに従うことは、患者への責任を果たし、治療の標準を維持するうえで重要です。

また、治療上の問題や訴訟が発生した際には、手引きに沿っているかどうかが治療の適切性を判断する一つの基準となることがあります。

実際の医療現場では、患者の具体的な状況や医師の臨床経験、地域の医療リソースなども考慮に入れながら、最適な診療方針が選ばれることになります。

したがって、新しい手引きの基準を適用するかどうかは、それぞれの医師が患者の最善の利益を考慮して決定することになります。

終わりに

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今回取り上げたLOH症候群の新しい診断基準の変更点は、あなたの健康管理にとって非常に重要です。

新基準がどのようにして定められ、なぜ普及が進んでいないのかについての理解は、自身の健康を守る上での一助となるはずです。

もしもこの記事を読んで新しい情報を得たり、何か疑問に思ったりしたなら、遠慮なく医師に相談してみてください。

医療の現場は日進月歩であり、私たち一人ひとりが最新の知識を持つことが、より良い健康へとつながるのですから。

今後とも、自分自身の健康は自分で守る意識を持ち、積極的に情報を得ていきましょう。

男性更年期障害の克服に必要なのは「ひとりじゃない」と思えること

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ABOUT ME
タツヤ
タツヤ
男性更年期障害予防改善アドバイザー
1971年生まれ。
2010年頃から動悸、めまい、発汗、倦怠感などの症状に悩まされる。
様々な病院で検査を受けるも原因が分からず『診断難民』状態に。
その間、体調は悪化するばかり。
2019年頃から体調不良(不定愁訴)が顕著に現れる。
2022年11月ホルモン検査の結果、男性更年期障害の診断を受ける。
以降、テストステロン補充療法を中心に治療を続け、合わせてテストステロンをアップさせるための生活習慣の改善に取り組み、2023年11月時点、テストステロン値も正常になり、男性更年期障害の症状は改善する。
現在は、自身の経験を活かし、SNS(X【旧Twitter】)やblog、同じ悩みを持つ方々によるコミュニティ、さらには各種メディア出演など通じて、男性更年期障害を中心としたメンズヘルスに関する情報を発信している。

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