更年期ロス

更年期ロスによる社会的損失を防ぐには?定期健康診断のホルモン検査義務化がカギを握る

otokono-kounenki

あなたは、仕事でのプレッシャーや責任感から、毎日ストレスを抱えていませんか?もしかしたら、それは男性更年期障害のサインかもしれません。男性更年期障害とは主に40歳代以降に男性ホルモンの分泌が減少し、さまざまな身体的・精神的な不調を引き起こす症状のことです。この症状は、仕事や家庭のパフォーマンスに影響を与え、経済的・社会的な損失を招く可能性があります。これを”更年期ロス”と呼びます。日本では、更年期ロスによる経済損失は年間数千億にも上ると推計されています。多くの男性は、自分が男性更年期障害にかかっていることに気づかず、適切な治療を受けられないまま放置しています。これはなぜでしょうか?それは、男性更年期障害に関する正しい知識が不足していることによって、医療機関、治療、予防など適切なアプローチが出来ていないことに他なりません。これはあなたの責任でしょうか?もちろん、あなた自身も正しい知識を学ぶ必要がありますが、もはや社会問題レベルであり、個人の責任論で片づけられるものではありません。もっと大きな視点の施策に展開させていく必要があります。今回は、個々の男性更年期障害の症状にフォーカスした内容ではなく、社会問題としての切り口で男性更年期障害について書かせていただきます。あなたやあなたの大切なパートの健康や生活の質を守るためにも、ぜひこの記事を読み進めてください。そして、共感できる部分がございましたら、ぜひ”ある”行動に移してください。どうぞよろしくお願いいたします。

更年期ロスとは何か?日本経済に与える深刻な影響

最初に、男性更年期障害がもたらす日本社会に与える社会的・経済的損失と、その防止に向けた改革の必要性についてお伝えします。

「更年期ロス」という言葉をお聞きになったことはありますか?

「更年期ロス」とは、男性のみならず女性にも当てはまる言葉ですが、簡単に言うと更年期障害によって、仕事やプライベートで、大きな損失を被ることをいいます。

「更年期ロス」とは、更年期障害によって、仕事やプライベートで、大きな損失を被ること!

その損失とは、どんなことでしょうか?

例えば・・・仕事では

休職(働けなくなる)

更年期症状がひどくて仕事に耐えられない場合、働けなくなり休職を余儀なくされることがあります。

休職期間は個人差がありますが、平均して約6か月と言われています。

長い方は、年単位、場合によっては、そのまま労働市場からの撤退、つまり再び働くことが難しくなることもあります。

ちなみに、私(運営者)は2カ月間休職して、幸いにも、その後仕事に復帰しました。

退職を余儀なくされる

休職から復帰できない場合や、仕事のパフォーマンスが低下して自信を失った場合、やむを得ず退職を選択することがあります。

職場に迷惑をかけるといいった想いを抱く方もいらっしゃいます。

ほんと、辛いですよね。

日本女子大学人間社会学部 教授 周 燕飛の調査(「NHK実施「更年期と仕事に関する調査2021」結果概要―仕事、家計への影響と支援についてー」)によると、更年期症状によって仕事を辞めた方々は、以下のようになっています。

  • 男性全体:4.7%
  • 女性全体:15.3%

この数字をあなたはどうみますか?

正社員(フルタイム)から非正規社員(時短勤務)へ

仕事と家庭の両立が困難になったり、体力的にフルタイム勤務が厳しくなったりすることで、正社員から非正規社員への転換を求めることがあります。

しかし、非正規社員は正社員よりも待遇や福利厚生が劣ることが多く、経済的な不安や不満を抱えることになります。

これについても、先述の調査(「NHK実施「更年期と仕事に関する調査2021」結果概要―仕事、家計への影響と支援についてー」)でデータが示されています。

  • 男性全体:2.7%
  • 女性全体:3.5%

降職(管理職から一般職へ)

更年期症状によって仕事の質や量が低下したり、人間関係にトラブルが起きたりすることで、管理職から一般職への降格を余儀なくされることがあります。

これはプライドや地位の喪失と言えます。

私(運営者)も、人事部の責任者の役職を、自ら降りました。

これについても、先述の調査(「NHK実施「更年期と仕事に関する調査2021」結果概要―仕事、家計への影響と支援についてー」)でデータが示されています。

  • 男性全体:3.3%
  • 女性全体:1.4%

昇格を諦める

更年期症状によって自信ややる気が低下したり、体調不良で仕事に集中できなかったりすることで、昇格のチャンスを逃したり諦めたりすることがあります。

これはキャリアアップの明らかな機会損失です。

責任の無いポスト(役割)へ

更年期症状によって仕事に対するモチベーションや能力が低下したり、周囲から信頼を失ったりすることで、責任の無いポストや役割に回されることがあります。

これは、存在意義や達成感の喪失と言えます。

特に、存在意義を感じなくなると、疎外感を感じるようになり、症状が更に悪化する要因にもなりえます。

収入の減少、アイデンティティや気力の喪失

上記のような影響によって収入が減少したり、自分のアイデンティティや気力を失ったりすることがあります。これは生活水準や生きがいの低下と言えます。

先述の調査(「NHK実施「更年期と仕事に関する調査2021」結果概要―仕事、家計への影響と支援についてー」)によると、何らかの仕事にマイナスの影響を及ぼしたケースとして、以下のデータが示されています。

  • 男性全体:9.3%
  • 女性全体:19.2%

例えば・・・プライベートでは

パートナーとの関係性にひび

更年期症状によって性欲が減退したり、イライラや不安が増したりすることで、パートナーとの関係にひびが入ることがあります。

また、仕事を辞めたり収入が減ったりすることで、経済的な問題や価値観の相違が生じることもあります。

これらの要因が重なって、離婚に至ることもあります。

パートナーとの分かれ

離婚と同様に、更年期症状によってパートナーとの関係が悪化したり、経済的な問題や価値観の相違が生じたりすることで、パートナーとの分かれを選択することがあります

このように、更年期ロスによって仕事やプライベートに大きな影響を受ける可能性があるのです。

ここで、声を大にして言いたいのは、更年期ロスは、個人だけの問題ではないということです。

更年期ロスは、社会全体に影響を与える深刻な問題なのです。

その日本の経済全体に与えるダメージは、驚くべき数字になっています。

なんと、更年期ロスによる経済損失は、男女合わせて年間およそ6,300億円と推計されています。

仕事を辞めたことによる収入減:約4,200億円(女性)、約2,100億円(男性)です。

更年期ロスによる経済損失は、男女合わせて年間およそ6,300億円にもなる!

男性の方が少ない数字ですが、これは顕在化していないだけで、潜在的にはこの数倍の規模であると考えています。

日本は超高齢化社会で、労働人口(働き世代)がどんどん減少している状況なのに、とてつもない経済損失ですよね。

なのに、対策は”個人任せ”が、現状なのです。

あなたは、この現状のままで良いと思いますか?

私(運営者)は、個人任せではなく、日本社会全体の問題として捉えて、国、社会、企業、個々人が連携して、更年期世代の健康管理やサポート、そして予防改善に積極的に取り組む必要があると、強く感じています。

定期健康診断の血液検査でホルモン値をチェックすることが重要な理由。早期発見・早期治療がカギです

では、日本社会全体の問題として捉えて、国、社会、企業、個々人が連携して、更年期世代の健康管理やサポート、そして予防改善に積極的に取り組むとして、具体的にどの様な方向性が考えられるでしょうか。

男性更年期障害の早期発見と早期治療に絶対に欠かすことができないのが「血液検査」によって、テストステロン値をチェックすることです。

血液検査で、テストステロンに異常値が確認されれば、早期に発見できて、早期に適切な治療を受けられますからね。

でも、多くの男性は、様々な不調が心身に現れても、自分が男性更年期障害にかかっていることに気づかず、また、知ろうとせず、適切な治療を受けられないまま放置していると言われています。

2022 年7月 に厚労省から発表された「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果によると、体調が悪くても医療機関を受診していない理由として、「医療機関に行くほどのことではないと思うから」という回答がNo1の回答になっています。

  • 20代:46.1%
  • 30代:60.1%
  • 40代:62.1%
  • 50代:60.7%
  • 60代:63.2%

出典:厚労省「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果

特筆すべきは、全世代でNo1だと言うことです。

全世代で、「見てみぬふり」を決め込んでいるのです。自分の健康問題なのに・・・

更年期世代と言われる40代以降が特に多くを占めていることも問題視すべき状況です。

これは、いかに男性更年期障害に関する正しい知識が不足しているかを物語る調査結果ではないでしょうか。

放置した結果、どんどん体調は悪化し、仕事が続けられなくなる・・・そんな負のスパイラルに陥ることが珍しくありません。

なんで、こんな状況が起きていると思いますか?

これは、全体的に男性更年期障害に関する正しい知識が不足していることによって、医療機関、治療、予防などに、適切なアプローチが出来ていないことに他なりません。

”そもそも論”ですが、男性更年期障害に関する正しい知識が不足していることで「テストステロン値を測定する」という、スタートラインにすら立つことが出来ていないのです。

正しいスタートラインに立てなければ、適切な医療機関、適切な治療、適切な予防という、正しいコースを走ることもできません。

多くの男性は、スタートラインがどこにあるのかさえ分からず、ウロウロしているだけなんです。

多くの男性「自身が男性更年期障害であるかもしれない」という可能性にすら、気付くことが出来ずにウロウロしている・・・結果、体調は悪化するばかり

仮に、スタートラインに立って、幸いにもスタートを切ったとしても、正しい知識が不足していれば、コースアウトしてしまいます。

こんな状況をあなたはどう思いますか?

「自己責任で、患者一人一人がしっかり学ぶ必要がある。」と思いますか?

それも、正論だと”は”思います。

患者は自分自身の事ですからね。

患者自身が、しっかり学ばなければなりません。

しかし、現状は自己責任論で済ませられる状況にはないのです。

それはなぜか?

残念ながら、医療関係者も、男性更年期障害について、十分知識がない場合も多々あるからです。

男性更年期障害で苦しんだ多くの方は、こんな経験をしている人が少なくありません。

体調不良で病院に行って検査をしても、原因がわからず、処方された薬を飲んでも、一向に体調が改善せず、体調が悪化していってしまった・・・

なんで、こんなことが起きるのでしょうか?

それは、医療関係者の知識も不足していることが大きく関係していると言わざるを得ないからです。

私(運営者)も経験者なのですが、原因が分からないまま、数年”治療難民”(医療機関にかかっても原因が特定されず適切な治療がうけられないまま彷徨うこと)を強いられました。

その間、体調は悪化の一途を辿ります。

その間、どこのクリニック(ドクター)でも、口を揃えたように・・・

「しばらく様子をみましょう」

「また何かあったら来てください」

の繰り返しです。

ドクターは誰一人「もしかしたら、ホルモンバランスの乱れかも・・・」なんて示唆はしてくれませんでした。

ドクターが一人でも、

  • 検査して異常なし
  • 薬を飲んでも改善しない

状況から、男性更年期障害かも?と疑ってくれればと。

そこから、ホルモン検査につなげられますからね。

しかし、現状そんなことは一度たりともありませんでした。

このような状況を見過ごしていると、先述したように更年期ロスによって、多くの方々が労働市場からの戦線離脱を余儀なくされ、それが労働人口減少にある日本の国力を低下させている要因になる可能性もあるのです。

この状況を改善するためには、個人任せではなく、国・社会・企業レベルの施策で対応しなければ、根本的な解決にはならないであろうと考えています。

私(運営者)が考えるに、その切り札が、定期健康診断の血液検査でのホルモン検査義務化です。

定期健康診断の血液検査でのホルモン検査義務化が更年期ロス対策の切り札!!

検査で異常値が出たら早期発見・早期治療につなげられる

男性更年期障害のテストステロン価を例にイメージしてみましょう。

定期健康診断の血液検査結果で、テストステロン値が~8.5 pg/mlで、問診で心身の不調を訴えていたとしたら、定期健康診断の所見は次のようになると考えられます。

「G:要再検査」という所見です。

血液を採取した時間が、例えばPM(午後)だった場合は、一過性の可能性もあるので、再意見の判断が下され、AM(午前中)の血液採取によるホルモン検査を行う。その上で、再度異常値(低い数値)が出たら、「D:要医療」の判断を下し、治療につなげていく。

さらに、企業内の保健師や産業医の所見でも、後押しをすれば、更に盤石な治療体制を敷くことが期待できます。

ご参考までに、定期健康診断で出される所見の一例です。

区分判定説明
A正常今回の健診では健康上で特に問題となる異常はありません。
B略正常生理的変化を含む軽度の変化が見られましたが、健康上で特に問題となる異常はありません。
C要経過観察健康維持のために医師や保健婦のアドバイスを参考にして、生活習慣を改善していく必要があります。次回の健康診断で経過を見ていきましょう。
D要医療放置していると悪化する可能性が大きい状態です。1日でも早く受診し、医師の適切な指示を受けることで早期の回復が期待できます。
E要精密検査適切な対処法を確認するために精密検査が必要です。早めに検査をし、適切な対処を行うタイミングを逃さないようにしましょう。
F要治療継続主治医の指示の元、病気の経過を見ながらコントロールを継続し、悪化しないように日常生活にも注意します。
G要再検査健康診断の結果で異常がありましたが、他の値とのバランスが不釣合いです。念のためにもう1度検査しましょう。
H要専門医受診内科、外科、婦人科などの専門分野の医師を受診し、アドバイスを受けましょう。

出典:独立行政法人国立病院機構横浜医療センター(「健康診断の判定区分」)

定期健康診断の血液検査項目にホルモン検査を義務化するために必要な法改正とは。労働安全衛生規則第44条の見直しが急務です

切り札である定期健康診断の血液検査でのホルモン検査義務化を実現するためには、労働安全衛生規則第44条の改正が必要です。

定期健康診断でのホルモン検査義務化には、労働安全衛生規則第44条の改正が必要になる!!

労働安全衛生規則第44条の改正の前に、定期健康診断について確認しておきましょう。

[box04 title=”定期健康診断”]

定期健康診断とは、労働安全衛生法に基づいて、使用者(会社等)が従業員の健康状態を把握し、職業病や生活習慣病などの予防や早期発見・早期治療を促すことを目的として行われる、年1回の健康診断のことです。

定期健康診断は、一般的な項目と特定業務に関する項目に分かれています。一般的な項目には、身体測定、血圧測定、血液検査、尿検査、胸部エックス線検査などがあります。特定業務に関する項目には、有機溶剤や騒音などの有害物質や環境に曝露される労働者に対して行われる検査があります。会社員のあなたは馴染みがありますよね。[/box04]

血液検査が男性更年期障害の早期発見と予防に不可欠であることは先に申し上げた通りですが、な、な、なんと、この定期健康診断の血液検査にホルモン検査の項目は入っていないのです!!

この定期健康診断の血液検査の項目にホルモン検査項目が追加されたら、どれだけの方々が定期的にホルモンチェックができるようになると思いますか?

この点については、定期健康診断でホルモン検査を実施した場合の人口カバー率というのを推計してみました。

定期健康診断のホルモン検査人口カバー率

結論は、なんと約68%です。しかも、働き世代の方々ですからね。更年期ロス対策としては、その効果は高いと言えるのではないでしょうか。

人口カバー率というのは、日本の全人口のうち、定期健康診断の血液検査を受けるであろう人の割合のことです。

このカバー率を求めるために、厚生労働省が公表している統計を参照してみました。

以下に、推計方法と推計結果を説明します。

ただし、私(運営者)が、何とか水準を掴みたいと思いこね繰り出した数字であり、このカバー率は、厚生労働省等が公表している統計に基づいて推定したものであり、実際のカバー率とは異なる可能性があります。

なので、あくまでイメージとしてご覧ください。

推計方法