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「やる気が出ない」「イライラ」…それ、男性更年期障害(LOH症候群)かも?うつ病との見分け方と対策を徹底解説!

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いつも読んでくださりありがとうございます。

男性更年期障害予防改善アドバイザーのタツヤです。

最近、「どうも体調がすぐれない」「気分が落ち込む」「何をするにもおっくうでやる気が出ない」…そんなふうに感じていませんか?こうした症状は「年のせいかな」「ちょっとうつっぽいのかも」と自己判断してしまいがちですが、実は「男性更年期障害(LOH症候群)」のサインかもしれません。

女性の更年期障害と比べてまだ認知度が低い男性の更年期障害は、うつ病と非常に似た症状が多く、見過ごされがちです。しかし、原因が異なれば、当然ながら治療法も変わってきます。間違った治療を続けてしまうと、なかなか症状が改善しないばかりか、別の病気を引き起こす可能性も。

この記事では、男性更年期障害(LOH症候群)と、間違えられやすい“うつ症状”との見分け方、そして適切な対処法について、専門家の視点から詳しく解説します。

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男性更年期障害(LOH症候群)って、一体何?

まず、男性更年期障害とは何かを理解しましょう。

正式名称は「加齢男性性腺機能低下症候群(Late-Onset Hypogonadism:LOH症候群)」といい、その名の通り、加齢に伴って男性ホルモン、特に「遊離型テストステロン」という活性型の男性ホルモンが低下することで引き起こされる様々な症状の総称です。

テストステロンは、男性らしい体つきを作るだけでなく、やる気や判断力、決断力といった精神的な働き、さらには筋肉量や骨密度、記憶力、内臓脂肪のコントロールにまで深く関わる、とても重要なホルモンです。20代をピークに徐々に減少していきますが、その減少スピードが速かったり、ストレスや生活習慣の乱れが加わることで、急激にテストステロン値が低下し、症状が現れると考えられています。

男性更年期障害(LOH症候群)で現れる症状は非常に多彩で、身体的、精神的、性的な側面から多岐にわたります。例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • 性機能の低下:性欲の減退、勃起機能の低下(特に夜間睡眠時勃起の減少)
  • 精神・心理症状:疲労感、抑うつ状態、気力の低下、不安、イライラ、短気、集中力・決断力の低下、物事への興味喪失
  • 身体症状:筋力低下、筋肉量減少、骨密度低下(骨粗鬆症リスク増)、内臓脂肪の増加、貧血、発汗、ほてり、冷え、睡眠障害(中途覚醒、熟眠感不足)、声枯れ(嗄声)、薄毛、耐寒性低下、めまい、頭痛、動悸、尿の勢いの低下、頻尿

「年のせい」と諦めがちなこれらの症状も、テストステロンの低下が原因であれば、適切な治療で改善が期待できるのです。

「うつ病」と「男性更年期障害」、なぜ見分けがつきにくい?

男性更年期障害(LOH症候群)の症状は、まさに「うつ病」や「適応障害」とそっくりなものが多いですよね。そのため、体調不良を感じて医療機関を受診した男性の多くが、最初に心療内科や精神科を訪れ、「うつ病」と診断され、抗うつ薬の治療を受けているケースが少なくありません。

例えば、「気持ちが落ち込む」「憂うつ」「やる気がない」「だるい」「眠れない」といった症状は、男性更年期障害(LOH症候群)とうつ病の両方に共通して見られます。この症状の重なりこそが、診断を難しくしている最大の理由です。

さらに、治療の面でも複雑なことがあります。

一部の抗うつ薬には、テストステロン値を下げてしまう可能性のあるものがあることが指摘されています。もし、男性更年期障害(LOH症候群)が原因で症状が出ているのに、テストステロンを低下させる可能性のある薬を服用してしまうと、症状が改善しないばかりか、かえって悪化してしまう、という悪循環に陥ることも考えられます。実際、抗うつ薬を服用しても症状が改善せず、病院を転々としている男性の中には、男性更年期障害(LOH症候群)が隠れているケースも多いと言われています。

このように、うつ病と男性更年期障害(LOH症候群)は密接に関係しており、どちらか一方だと決めつけずに、両方の可能性を視野に入れて診察を行うことが非常に重要になります。

症状だけじゃない!見極めるための「サイン」とは?

では、どうすればうつ病と男性更年期障害(LOH症候群)を見分けられるのでしょうか?最も重要なのは、症状だけで自己判断しないことです。専門的な検査と医師の総合的な判断が必要になります。

しかし、いくつかの傾向や「サイン」を知っておくことで、受診する際の参考になるでしょう。

  • 決定的な違い:血液中の「遊離型テストステロン値 男性更年期障害(LOH症候群)の診断に必須とされるのが、血液検査による遊離型テストステロン値の測定です。日本の診療ガイドラインでは、遊離型テストステロン値が8.5 pg/mL以下の場合を男性更年期障害(LOH症候群)と診断する一つの基準としています。これは、20歳代の平均値から大きく下がる「正常下限値」にあたります。なぜ「総テストステロン」ではなく「遊離型テストステロン」かというと、遊離型テストステロンの方が加齢による減少が顕著で、肝疾患や甲状腺疾患、肥満などの影響を受けにくいとされているためです。うつ病の場合は、必ずしもテストステロン値の低下を伴うわけではないため、この数値は男性更年期障害(LOH症候群)を見分ける上で非常に重要な指標となります。採血は、テストステロン値が日中に変動するため、午前中に行うことが推奨されています。
  • 「やる気が出ない」の時間帯や体重変化 うつ病の典型的な症状では、朝に気分が最も落ち込み、夕方になるにつれて元気になるという「日内変動」が見られることがあります。また、食欲不振に伴い痩せる方が多い傾向があります。一方で、男性更年期障害(LOH症候群)による気力の低下や疲労感は、夕方にかけて強く感じられる傾向があり、急激な体重増加を伴うこともあります。さらに、男性更年期障害(LOH症候群)では頻尿を伴う睡眠障害が見られることもあります。ただし、これらはあくまで傾向であり、個人差が大きく、症状だけで断定することはできません。
  • ストレス要因の有無 うつ病は、転勤や転職、人間関係のトラブル、家族の問題など、明確なストレス要因や環境の変化が引き金となって発症することが多いとされています。これに対して、男性更年期障害(LOH症候群)は、特に大きなストレスがないにも関わらず、抑うつ症状や倦怠感などが続く場合にその可能性が高まると考えられます。
  • 問診票による症状評価 男性更年期障害(LOH症候群)の症状評価には「AMS(Aging Males’ Symptoms)スコア」という問診票が用いられます。これは、精神的、身体的、性的な17項目からなる質問票で、自己評価によって点数化し、重症度を判断します。うつ病の評価には「BDI-Ⅱ(Beck Depression Inventory 2nd edition)」や「HAM-D(Hamilton Depression Rating Scale)」などの質問票が用いられ、これらは精神疾患との鑑別にも役立ちます。
こちらから受けられます!
AMSスコア
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これらのサインを総合的に考慮し、「もしかしてLOH症候群かも?」と感じたら、専門医への相談を検討しましょう。

専門的な検査と診断のステップ

男性更年期障害(LOH症候群)の可能性を疑った場合、どのような手順で診断が進められるのでしょうか?

詳細な問診と問診票(AMSスコア)の記入

まずは、ご自身の症状や生活習慣について詳しく医師に伝えます。男性更年期障害(LOH症候群)に特化した「AMSスコア」などの問診票を使って、症状の程度を客観的に評価します。これにより、症状の全体像を把握し、重症度を判断する手助けとなります。

血液検査によるホルモン値の測定

男性更年期障害(LOH症候群)の診断に欠かせないのが、血液検査です。特に重要なのは、先ほども触れた「遊離型テストステロン」の値です。診断の際は、日内変動を考慮し、午前中に採血を行うことが推奨されます。 これに加えて、以下のホルモン値も測定し、テストステロン低下の原因(精巣の問題か、脳の下垂体の問題かなど)や他の内分泌疾患の可能性がないかを確認します。

  1. LH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン):テストステロン低下の原因が精巣(原発性)にあるのか、脳(続発性)にあるのかを鑑別します.
  2. PRL(プロラクチン):プロラクチンが高いと性腺機能低下の原因になることがあるため、測定します。症例によっては抗うつ薬(スルピリドなど)の服用が原因となる高プロラクチン血症も見られます。
  3. TSH、FT4:甲状腺機能低下症など、他の疾患を除外するためです。
  4. GH(成長ホルモン)、IGF-1、DHEA、DHEAS、コルチゾール:これらのホルモンの低下もLOH症候群に似た症状を引き起こす可能性があるため、必要に応じて測定します。

基礎疾患のスクリーニングとアンドロゲン補充療法の適応決定

血液検査では、肝機能、腎機能、脂質代謝、血糖値、貧血の有無なども確認し、男性更年期障害(LOH症候群)以外の内科的疾患や、アンドロゲン補充療法の安全性を確認します。また、前立腺がんのリスクを評価するために、PSA(前立腺特異抗原)の測定も必須です。男性更年期障害(LOH症候群)は、うつ病以外にも睡眠時無呼吸症候群、糖尿病、甲状腺機能低下症など、さまざまな疾患と鑑別が必要となります。

  1. 総合的な診断 これらの検査結果と問診、問診票の評価を総合的に判断し、LOH症候群の診断が下されます。診断基準は世界的に統一されたものはありませんが、日本では「症状、テストステロン値、AMSスコア、および他の疾患の除外」によって総合的に判断します。

5. もし男性更年期障害(LOH症候群)と診断されたら?治療の選択肢

男性更年期障害(LOH症候群)と診断された場合、症状やテストステロン値の程度に応じて、いくつかの治療選択肢があります。

テストステロン補充療法

遊離型テストステロン値が8.5 pg/mL未満の「低値」と診断された場合に、第一選択となる治療法です。不足している男性ホルモンを直接補充することで、症状の改善を目指します。日本では主に筋肉注射で行われ、数日後から症状の改善を自覚する方もいらっしゃいます。定期的な注射により、筋肉量、骨密度、精神症状、性機能の改善が期待できます。 ただし、テストステロン補充療法には、いくつかの副作用禁忌事項がありますので、医師との十分な相談が必要です。

  • 主な副作用の可能性:多血症、肝機能障害、体液貯留、前立腺肥大症の悪化、女性化乳房、ざ瘡(にきび)、体毛増加、精巣萎縮、不妊、行動・気分の変化など。特に多血症や肝機能障害は比較的頻度が高いとされています。これらの副作用を監視するため、治療開始後は定期的な血液検査が必須となります。
  • 主な禁忌事項:前立腺がん、男性乳がん、中等度以上の前立腺肥大症、治療前のPSA値が高い場合(4.0 ng/mL以上など)、多血症、重度の肝機能障害、重度の腎機能不全、うっ血性心不全、重度の高血圧、睡眠時無呼吸症候群(CPAP治療中の場合は問題なし)、そして将来的に子どもを希望する方です。特に子どもを希望する方には、テストステロン補充療法が精巣機能や造精機能に悪影響を与える可能性があるため、推奨されません。

非ホルモン補充療法(漢方薬など)

遊離型テストステロン値が8.5 pg/mL以上11.8 pg/mL未満の「ボーダーライン」と診断された場合や、ホルモン補充療法が禁忌となる方、症状が比較的軽度な方には、漢方薬などが治療の第一選択となることがあります。具体的には、補中益気湯柴胡加竜骨牡蛎湯などが用いられます。これらの漢方薬は、男性ホルモンを直接補充するわけではなく、身体のバランスを整え、症状を緩和することを目的とします。 また、性機能症状が強い場合にはED治療薬(PDE5阻害薬)、精神症状が強い場合には抗うつ薬や抗不安薬の服用を検討することもあります。ただし、抗うつ薬については、テストステロン低下の可能性を考慮し、専門医と慎重に相談しながら進める必要があります。

男性更年期障害(LOH症候群)の治療は、泌尿器科医、内科医、精神科医、整形外科医など、様々な分野の専門家が連携して行うことが理想とされています。適切な診断と治療を受けることで、悩んでいた症状が改善し、生活の質(QOL)を大きく向上させることが期待できます。

終わりに

「どうも不調が続くけれど、何科を受診すればいいのか分からない」と一人で悩んでいませんか?「やる気が出ない」「イライラする」「疲れが取れない」といった症状は、決して「怠け」や「気のせい」ではありません。男性更年期障害(LOH症候群)は、適切に診断し、治療すれば症状の改善が見込める病気です。

うつ病と症状が似ているため、自己判断はせずに、まずは男性の健康問題に詳しい泌尿器科やメンズヘルス専門クリニックに相談してみてください。血液検査一つで、男性更年期障害(LOH症候群)の可能性が見えてくることもあります。専門家があなたの症状に耳を傾け、正確な診断と最適な治療法を提案してくれます。症状に合わせた治療で、以前のような活き活きとした毎日を取り戻しましょう。

男性更年期障害の克服に必要なのは「ひとりじゃない」と思えること

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ABOUT ME
タツヤ
タツヤ
男性更年期障害予防改善アドバイザー
1971年生まれ。
2010年頃から動悸、めまい、発汗、倦怠感などの症状に悩まされる。
様々な病院で検査を受けるも原因が分からず『診断難民』状態に。
その間、体調は悪化するばかり。
2019年頃から体調不良(不定愁訴)が顕著に現れる。
2022年11月ホルモン検査の結果、男性更年期障害の診断を受ける。
以降、テストステロン補充療法を中心に治療を続け、合わせてテストステロンをアップさせるための生活習慣の改善に取り組み、2023年11月時点、テストステロン値も正常になり、男性更年期障害の症状は改善する。
現在は、自身の経験を活かし、SNS(X【旧Twitter】)やblog、同じ悩みを持つ方々によるコミュニティ、さらには各種メディア出演など通じて、男性更年期障害を中心としたメンズヘルスに関する情報を発信している。

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