敵か、味方か。男性更年期とコレステロールの微妙な関係
中高年になると、「コレステロールの数値」は身近な関心ごとの一つです。
健康診断で高い数値が出ると、その数値を下げようと食事や運動の習慣を見直す人も多いでしょう。
コレステロールが高いことで、発症するリスクを低減することができるから、これは正しい選択です。
ところが、男性更年期障害(LOH症候群)になると、話は少し変わってきます。
一般的に「コレステロール=悪者」というイメージがありますが、男性更年期の世代では必ずしもそうとは限らないのです。
むしろ“低い”ことが、”男性更年期障害”特有の問題を招くことも。
では、コレステロールを下げるだけではダメとは、どういう意味なのでしょうか。
私たちが“敵”だと思い込んできたそのコレステロール――
実は、男性更年期と深く関わる“味方”の一面も持っているのです。
はたして、コレステロールは敵なのか、味方なのか――。
男性更年期というステージでその答えを探ると、これまでの常識とは違う“もう一つの真実”が見えてきます。
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“悪者”とされるコレステロールの正体
健康診断などで「LDLコレステロールが高い」という結果を突きつけられると、多くの人は“酒の飲みすぎ”や“脂っこい食事のしすぎ”を思い浮かべるのではないでしょうか。
確かに、それらが影響する場合もあります。

あなたもご存知かとは思いますが、LDLについておさらいしておきましょう。LDLとはいわゆる「悪玉コレステロール」のことです。体の中では本来、ホルモンや細胞の材料を運ぶ“働き者”ですが、そのバランスが崩れると血管に負担をかけてしまいます。
そして――そのバランスを揺るがす根本要因のひとつが、テストステロンの低下なんです。
つまり、酒や脂よりも先に、男性ホルモンの変化が代謝を鈍らせ、内臓脂肪をため込みやすい体へと変えてしまう。
その結果、血中のコレステロールや中性脂肪が上昇してしまう。いわゆる“メタボ予備軍”ってやつですね。
男性更年期障害を発症している私自身も確かに、40代半ばからLDLの数値が上昇していました。
暴飲暴食をしていないのに、LDLは160mg/dL台だったことも。
医師から「そろそろ薬を検討しましょう」と言われたときも、まさか男性ホルモンが関係しているとは思いもしませんでした。
LDLが高すぎると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが上がります。
実際、70代男性では総コレステロールが240mg/dLを超えると、 冠動脈疾患による死亡率が有意に上昇するという研究もあります。
とはいえ、我々のような男性更年期の当事者にとっては、「コレステロールを下げればいい」という単純な話ではないこともあるんです。
――それが、コレステロールという存在のやっかいで、そして奥深いところなのです。
味方でもある――テストステロンの“材料”としてのコレステロール
コレステロールは本来、”命”の材料です。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、ホントのことです。
細胞膜をつくり、胆汁酸やビタミンD、そして何よりもテストステロンの“原料”にもなっているんです。
そうなんです。コレステロールは我々が日々高めようと奮闘しているテストステロンの“原料”なんです。
テストステロンはコレステロールをもとに、副腎と精巣で合成されます。
つまり「脂を摂らなければテストステロンが作れない」というのは、半分は正しいのです。
ただし問題は、“それがちゃんと使われるかどうか”。
男性更年期障害のように性腺機能が低下している状態では、コレステロールという原料があっても工場(ホルモン合成系)がうまく稼働しません。
結果として、余ったコレステロールが血中に残り、動脈硬化などのリスクを高めてしまいます。
つまり、コレステロールはテストステロンにとって「味方」でもあり、「使われないまま溜まって」いるといつの間にか敵にもなり得る存在なのです。
鍵になるのは、“テストステロンが使える体の状態を保てるかどうか”です。
食事のバランスでホルモンと脂質を整える
「卵を食べたらコレステロールが上がる」という話を、一度は耳にしたことがあると思います。でも、それは使い古された都市伝説に近い考えで、今では何個でも食べて大丈夫というのが、医学的にも、科学的にも正しい見解です。
肝臓が必要な量のコレステロールを作り出すため、食事から摂る分は全体の2〜3割程度にすぎません。
大切なのは“量”より“質”です。
オリーブオイルやナッツ(素焼き)などの“不飽和脂肪酸”はLDLを下げ、HDL(善玉)を上げます。
一方で、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸はホルモンにも血管にも悪影響を与えます。
私が実践して効果を感じたのは、「魚中心・野菜多め・ナッツ少々」という食事です。
EPA・DHAが豊富な青魚を週に2回、オートミールや大麦などの水溶性食物繊維を毎日。
これだけでもLDL値は20近く下がり、朝の体調もイイ感じになってきました。
ホルモンも血管も、食卓で同時に整えることができるのです。
運動は“二刀流”の薬になる。テストステロンと脂質を同時に動かす
有酸素運動はコレステロールを減らし、筋トレはテストステロンを増やします。
この“二刀流”を組み合わせることで、ホルモン系が一気に活性化します。
更年期世代のあなたにおすすめの運動は、筋トレ→有酸素運動の組み合わせです。
筋トレをしてからの有酸素運動という、順番が大切です。
それは、筋トレの後に有酸素運動を行うと、脂肪燃焼がより効率的に進むからです。
筋トレで成長ホルモンが分泌され、体脂肪が分解されやすくなり、さらに筋トレにより糖質が消費されるため、その後の有酸素運動で脂肪が主要エネルギー源として使われやすくなります。
これが筋肉を維持しつつ、代謝を高めて痩せやすい体をつくる科学的に理にかなった順番です。
ご参考に、私の運動メニューをご紹介します。
出来るだけ毎日、朝ウォーキングを約30分行います。朝出来ない時は、日中に行うようにしています。
ジム(エニタイムフィットネス)に行ける日は必ず行きます。だいたい、週3〜4です。
ジムでのトレーニングは、部位を四つに分けて、「今日は下半身の日」と決めて、筋トレをします。
①下半身
②背中
③胸
④腹部
ジムで行う有酸素運動は、ウォーキングがメインですが、ローイングマシーン(ボート漕ぎ)がおすすめです。ローイングマシーンは、有酸素運動だけでなく、全身の筋肉も動かすので、有酸素運動と筋トレがまとめて出来ちゃいます。
体重も落ちますし、もちろんLDL値も改善します。
そして何より、気力が戻ったのが嬉しいですね。
運動は単なる“ダイエット手段”ではありません。
「体を動かす=ホルモンにスイッチを入れる」アクションです。
だから、続けること自体が男性更年期障害の治療になるのです。
必要に応じて医療の力を借りる
それでもコレステロールが下がらない場合には、薬やホルモン療法を検討する必要があります。
スタチン系薬はLDLを強力に下げる一方で、一部の研究では総テストステロンを3〜4%下げる可能性が報告されています。
男性更年期障害の治療で、テストステロン補充療法を受けている際にスタチン系薬を服用する際は、ホルモン・筋肉・代謝の3点で注意が必要です。
繰り返しますが、スタチン系の薬は総テストステロンを3〜4%低下させることがあるため、男性更年期障害の症状をわずかに悪化させる可能性はゼロではありません。
そのため、服用中は総テストステロンや遊離テストステロンを定期的に測定し、倦怠感や性欲低下が強い場合はスタチンの種類を見直すことが推奨されています。また、テストステロン補充療法と併用する場合は、多血症や血栓のリスクを考慮し、PSA(前立腺のリスクを診る指標)などを定期的にチェックします。スタチンによる筋肉痛や筋力低下などの副作用が続く場合は横紋筋融解症の可能性もあるため早めの検査が重要です。つまり、心血管リスクを抑えながらホルモンバランスを観察し、適切なモニタリングを続けることが男性更年期障害治療中に行うスタチン治療の鍵です。
とはいえ、その総テストステロンの数%程度の低下よりも、動脈硬化リスクを下げる効果のほうが明らかに大きいはずです。命のリスクに直結しますからね。
医師と相談しながら、薬と生活改善を両立させるのが現実的です。
ちなみに、LDLの”高い低い”に注目しちになりますが、LDLとHDLの比率、L/H比率をチェックすることも大切です。
L/H比とは、悪玉(LDL)コレステロールを善玉(HDL)コレステロールで割った数値で、血管の健康状態を示す指標です。値が高いほど動脈硬化のリスクが上がります。一般に、1.5以下が理想、2.0を超えると注意、2.5以上で心筋梗塞などの危険が高いとされます。悪玉と善玉のバランスを整えることが重要です。

また、明確なホルモン低下がある場合には、テストステロン補充療法(TRT)が選択肢となります。注射や塗り薬でテストステロンを補うと、総コレステロールや中性脂肪が下がるケースもあります。
ただし、自己判断での使用は危険な場合も。
前立腺や血液の状態を確認しながら、専門医の管理下で行う必要があります。
睡眠・ストレス・生活リズムがホルモンを決める
夜ふかし、ストレス、アルコール。
これらはホルモンとコレステロールの両方に悪影響を与えます。
特に睡眠不足は、翌朝のテストステロン値を下げる原因になります。
1日7時間以上の睡眠が目安で、私の場合、睡眠を整えただけで体調が安定しました。
ちょっと睡眠不足になるだけで、翌日の日中の体調はガタガタです。
睡眠は奥が深いです。量だけではなく質も大切ですから。
わたしは出来るだけ客観的に睡眠の質をチェックするために、スマートリング(SOXAI)やスマートウォッチ(アップルウォッチ)などで、毎日モニタリングするようにしています。
さらにストレス下ではコルチゾールというホルモンが分泌され、テストステロンの分泌を抑えてしまいます。
つまり、“心を休ませる”ことも立派な治療法なのです。ちなみに、ストレスもスマートリング(SOXAI)で日々モニタリングです。
ストレス対策は人それぞれですが、ウォーキングや湯船に浸かる、音楽や自然など、あな
たがが心地よいと感じる時間を意識的に取り入れてみてください。
まとめ
コレステロールは、敵でも味方でもありません。
「使える体を持っているかどうか」で立場が変わります。
テストステロンの材料として不可欠でありながら、過剰に溜まってくれば血管を蝕む悪党に変身します。
男性更年期では、テストステロンの低下が脂質異常(LDL増加など)を招き、脂質異常がさらにテストステロンを下げるという悪循環に陥りやすいです。
その負のループを断ち切るためには、時に適切な治療と、食事・運動・睡眠という“生活の再設計”が欠かせません。
数値だけを追いかけるのではなく、「テストステロンが働ける環境を整える」ことに目を向けましょう。
コレステロールと上手につき合うことは、テストステロンと共に生きることでもあります。
それが、男性更年期を健やかに乗り越える第一歩です。





